メニューの原価、計算できていますか?
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メニューの原価、計算できていますか?

薬剤の値上げ、光熱費の高騰、業務委託料の見直し——コストは静かに上がり続けているのに、メニューの値段は数年前のまま、ということはありませんか。「なんとなく相場に合わせて決めた」値段は、材料費が上がった今、実は赤字すれすれかもしれません。

この記事では、メニューごとの原価をどう出すか、材料費率という指標をどう使うか、セットメニューで陥りやすい落とし穴まで、数字が苦手な人でも追えるやり方で整理します。

個人事業主の美容師がひとりで抱える仕事

技術の練習をして、集客のSNSを更新して、カルテを書いて、予約対応をして——そのうえで「このメニュー、原価はいくらだろう」まで考える余裕は、正直なかなか持てませんよね。雇われていた頃は、メニューの値段も原価率も、店側が決めてくれていました。でも独立すると、値段を決めるのも、それが採算に合っているか確認するのも、ぜんぶ自分の仕事になります。忙しいと、去年決めた値段のまま突っ走ってしまうのも無理はありません。だからこそ、一度だけ腰を据えて原価を出しておけば、あとは数字が教えてくれる状態になります。

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「なんとなくの値段」が危ない理由

メニューの値段を決めるとき、多くの人は「近くのサロンの相場」や「なんとなくこのくらい」で決めています。それ自体は悪いことではありませんが、コストの変化を反映せずに据え置いていると、じわじわ利益が削られていきます。

こんな心当たりはありませんか
  • 薬剤や消耗品の仕入れ値が上がったのに、メニューの値段は据え置き
  • セットメニューの割引率を、感覚で決めている
  • 時間のかかるメニューほど、実は利益が薄いかもしれないと薄々気づいている
  • 原価を計算したことが一度もない

材料費は毎年のように上がっています。値段を据え置くということは、実質的に毎年、自分の取り分を削っているのと同じです。しかも忙しく働いているほど、この目減りには気づきにくいという厄介さがあります。売上は増えているように見えても、手取りが増えていないなら、原価が静かに膨らんでいるサインかもしれません。

ポイント: 値段の見直しは「値上げするかどうか」の話の前に、まず「今の値段が今のコストに見合っているか」を確認するところから始めます。

メニュー原価の出し方

原価計算と聞くと難しそうですが、美容室の場合は含めるべき項目を洗い出せば、それほど複雑ではありません。

原価に含める項目具体例
薬剤・材料費カラー剤、パーマ液、トリートメント剤など、そのメニューで使う分量
消耗品費ケープ、ペーパー、手袋、コットンなど1回あたりの按分
時間コスト施術時間 × 自分の時間単価(後述)
面貸し料・家賃按分1回あたりに割り振った場所代
光熱費・水道代シャンプーやパーマの工程で使う分の目安

特に見落とされがちなのが時間コストです。材料費だけを原価と考えてしまうと、施術に長い時間がかかるメニューほど、実際には割に合っていないことに気づけません。まずは自分の「1時間あたりいくら稼ぎたいか」という時間単価を決め、施術時間をかけ合わせることで、時間コストを数字にできます。

ポイント: 材料費だけでなく、時間も原価の一部として扱うこと。これができるだけで、メニューごとの本当の利益がはっきり見えてきます。
メニュー原価の出し方

「材料費率」という指標で振り返る

メニューごとの原価が出せたら、次に見るのが材料費率——売上に対して材料費がどれだけの割合を占めるかです。

カット材料費率は低め。時間コストの比重が大きい
カラー・パーマ薬剤代がかさみ、材料費率が上がりやすい
トリートメントグレードにより材料費率の差が大きい

メニューによって、原価の中身はまったく違います。カットのように時間コストの比重が大きいメニューと、カラーのように薬剤代の比重が大きいメニューでは、値上げが効くポイントも違ってきます。材料費率が高いメニューは、薬剤のグレードやメーカーを見直すだけでも改善できることがあり、時間コストの比重が大きいメニューは、施術時間そのものの効率化が効いてきます。すべてのメニューを同じ物差しで見ないことが、原価管理のコツです。

客単価そのものを底上げしたい場合は客単価を上げる方法も、店販による利益の上乗せを考えたい場合は店販売上の伸ばし方もあわせてご覧ください。

セットメニュー・パック料金の落とし穴

単品では適正な値段でも、セットメニューにした瞬間に赤字ぎりぎりになっている——これは、原価計算をしていないサロンで非常によく起きる落とし穴です。

1
単品ごとの原価を先に出すカット・カラー・トリートメントなど、それぞれの原価を個別に把握します。
2
セットにする理由を決める「お得感を出したい」のか「時間効率を上げたい」のか、目的をはっきりさせます。
3
割引率の上限を決めておく単品合計から何%まで下げてよいかを、原価を踏まえてあらかじめ決めておきます。
4
採算ラインを下回っていないか確認する時間コストと材料費の合計を、セット料金が上回っているかを最終チェックします。

「お得感を出したい」という気持ちが先行すると、割引率を決めずになんとなく端数を切り下げてしまいがちです。しかし、原価を把握しないまま割引を重ねると、忙しく働いているのに手取りが増えないという状態を自分で作ってしまいます。セットメニューは集客の武器になりますが、原価という土台があって初めて安全に使える武器です。

値上げ・値下げの判断にどう使うか

原価と材料費率が見えるようになると、値上げの判断もぐっと具体的になります。「なんとなく値上げしたい」ではなく、「このメニューは材料費率が◯%を超えているから見直す」という、根拠のある判断ができるようになるからです。

ポイント: 値上げは全メニュー一律に行う必要はありません。材料費率が上がったメニューから優先的に見直すほうが、お客様への影響を抑えながら利益を守れます。

逆に、材料費率が低く抑えられているメニューは、無理に値上げせず、集客の入り口として使うという判断もできます。原価の見える化は、値上げのためだけでなく、「どのメニューを主力にするか」というメニュー構成そのものの戦略にも使えるのです。値上げの伝え方に不安がある場合は値上げの伝え方も、メニュー構成全体の見直しにはメニュー・料金の決め方もあわせてご覧ください。

値段はずっと開業したときのままでした。あるとき薬剤の値上がりに気づいて原価を計算してみたら、人気メニューのひとつが材料費率だけで4割を超えていて驚きました。そこだけ薬剤のグレードと料金を見直したら、忙しさは変わらないのに手取りが増えました。
— ひとりで頑張る美容師の実感

原価管理を「仕組み」として続ける

原価計算は、一度やって終わりではありません。材料費は変動しますし、施術時間も慣れによって変わっていきます。だからこそ、年に1〜2回、決まったタイミングで見直す習慣をつけておくのがおすすめです。

おすすめのタイミングは、仕入れ先から値上げの連絡が来たときと、確定申告のために1年分の経費を振り返るときです。特に確定申告のタイミングは、1年間の材料費の実績がまとまって見える貴重な機会。ここでメニューごとの原価を棚卸しすれば、次の1年の値付けに具体的に反映できます。「忙しいから後回し」を繰り返さないためにも、振り返るタイミングをあらかじめ決めておくことが、原価管理を仕組みとして続ける一番のコツです。

この記事のまとめ
  • 材料費は毎年上がっている。値段を据え置くことは、実質的に自分の取り分を削ることと同じ
  • 原価には材料費だけでなく「時間コスト」も含めて考える
  • 材料費率はメニューによって中身が違う。すべて同じ物差しで見直さない
  • セットメニューは、単品原価を先に出してから割引率の上限を決める
  • 値上げは一律ではなく、材料費率が上がったメニューから優先的に見直す
  • 確定申告で1年分の経費を振り返るタイミングを、原価の棚卸しにも使う
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よくある質問

Q. 原価計算は何から始めればいいですか?

まずは人気メニュー1〜2個だけで構いません。使っている薬剤の分量と単価を確認し、施術時間に自分の時間単価をかけ合わせるところから始めてみてください。全メニュー一気にやろうとすると挫折しやすいので、少しずつ広げるのがコツです。

Q. 時間単価はどう決めればいいですか?

決まった正解はありませんが、生活費や事業の固定費をもとに「1時間あたりいくら稼ぐ必要があるか」から逆算する方法が現実的です。売上管理の基本的な考え方は美容師の売上管理のやり方もあわせてご覧ください。

Q. 材料費率の目安はどのくらいですか?

メニューやサロンの方針によって大きく異なるため一概には言えません。大切なのは絶対値よりも、去年と比べて上がっていないか、メニュー間で極端な差がないかを確認することです。

Q. セットメニューの割引はどのくらいまでなら大丈夫ですか?

単品合計の原価を下回らない範囲、というのが最低限の目安です。そのうえで、時間コストや面貸し料も含めた採算ラインを確認し、割引率の上限をあらかじめ決めておくと、感覚だけで値引きしてしまうのを防げます。

Q. 原価計算の結果、値上げが必要と分かったらどう伝えればいいですか?

根拠を持って伝えることが大切です。材料費が上がっている事実をもとに、無理のない範囲で伝えるコツを値上げの伝え方にまとめています。

Q. 経費や材料費の記録はどのくらいの頻度でつければいいですか?

仕入れのたびにその場で記録するのが理想です。まとめて後から思い出すと、細かい金額が抜けやすくなります。日々の記録が、そのまま原価計算や確定申告の土台になります。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・仕様の詳細は各提供元や専門家の最新情報をご確認ください。