「暇な月」は毎年ほぼ同じ時期に来る
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「暇な月」は毎年ほぼ同じ時期に来る

予約表を開いても、空白が目立つ。SNSを見れば同業者は忙しそうで、自分だけ止まっている気がしてくる——閑散期の不安は、売上が下がること以上に、気持ちを削ります。

けれど閑散期は、多くの場合毎年ほぼ同じ時期に来ます。つまり「予測できる出来事」です。この記事では、自分の閑散期を数字で特定し、慌てずに乗り切るための準備と動き方を、ひとりで働く美容師の目線でまとめました。

個人事業主の美容師がひとりで抱える仕事

フリーランスや業務委託だと、暇な月はそのまま収入の落ち込みになります。サロン勤めなら固定給が支えてくれた部分も、独立したら全部自分の肩に乗る。しかも集客もSNSもカルテも予約管理も確定申告もぜんぶ自分ひとりで回しながら、です。

怖いのは、焦って「とりあえず割引」に手を出してしまうこと。目先の予約は埋まっても、単価が下がり、割引でしか来ない層が増え、翌年もっと苦しくなる。その悪循環に入らないためには、閑散期が来る前に手を打っておくことがすべてです。まずは、敵の正体をはっきりさせましょう。

閑散期は「不調」ではなく「毎年の周期」

まず認識を変えるところから。予約が減ると「自分の腕が落ちたのでは」「何か嫌われたのでは」と考えてしまいがちですが、多くの場合は季節要因です。

美容室は、世の中の予定に連動します。年末年始やイベント前は「きれいにしてから行きたい」で混み、その直後は反動で空く。大型連休の時期は旅行や帰省で来店が後ろにずれる。お客様の生活のリズムが、そのまま予約表に出ているだけなのです。

閑散期にやりがちなこと
  • 不安になって、慌てて大幅な割引クーポンを出す
  • SNSの投稿もぱたりと止まってしまう
  • 「自分に問題があるのでは」と落ち込み、判断が鈍る
  • 暇な日を休みにしてしまい、収入がさらに減る

もうひとつ知っておきたいのが、閑散期は「みんな」に来ているわけではないということ。同じ地域でも、学生が多いサロンと会社員が多いサロンでは空く時期がずれます。だからこそ、他店の話や一般論をそのまま自分に当てはめないほうが安全です。

周期だと分かっていれば、慌てずに済みます。むしろ「毎年ここが空く」と分かっていることは、準備できるということ。予測できる出来事は、対策できる出来事です。

ここで大事なのは、一般論ではなく自分の数字で確認すること。同じ地域・同じメニュー構成でも、お客様の層によって空く時期は変わります。次のセクションで、その特定の仕方を見ていきます。

まず「自分の閑散期」を数字で特定する

「なんとなく2月は暇な気がする」ではなく、月ごとの数字を並べて見るところから始めます。感覚と実際がズレていることは、よくあります。

1
月別の売上と客数を並べる12か月分。売上だけでなく客数も見ることで、単価が落ちたのか人が減ったのかが分かれます。
2
前年と比べる2年分あれば「毎年その月が空くのか」がはっきりします。1年目なら、まずは記録を残すことが翌年の武器になります。
3
曜日・時間帯も見る月単位では平常でも、平日の昼だけ空いている、という形の閑散もあります。
客数減っているのは人か、単価か
前年比周期か、それ以外かを分ける

この見方は売上管理のやり方でも解説していますが、閑散期対策でとくに重要なのは「客数が減ったのか、単価が下がったのか」を分けることです。

客数が減っているなら、集客と再来の設計の問題。単価が下がっているなら、メニュー構成や提案の問題です。原因が違えば打つ手も違うので、ここを混ぜたまま対策すると空振りします。

ポイント: 「暇だ」と感じた月の数字を、あとから調べようとしても思い出せません。その月のうちに記録しておくことが、翌年の自分を助けます。毎日30秒の入力が、来年の予測になります。
まず「自分の閑散期」を数字で特定する

繁忙期のうちに、閑散期の仕込みをする

閑散期対策でいちばん効くのは、閑散期に入る前の行動です。暇になってから慌てても、集客が実を結ぶまでには時間がかかります。

もっとも確実なのが、忙しい時期に来てくださったお客様の、次回来店を先に押さえておくことです。混んでいる時期のお客様が、そのまま空く時期に戻ってきてくれれば、谷は自然と浅くなります。

1
次回予約をその場で取る「次は◯週間後がちょうどいい時期です」と、来店周期に合わせて提案します。
2
空く時期に日程を寄せる候補日を出すとき、これから空きそうな時期の枠を先に提示します。
3
行く理由を添える「そのころ色が抜けてきます」など、次に来る必然性を一言そえます。
忙しい月ほど、その場で次回を決めていただくようにしました。すると数か月後、以前なら閑散期だった時期にちらほら予約が入っている状態になって。何もしていないのに埋まっているように見えますが、実は繁忙期の自分が仕込んでいただけなんですよね。
— ひとりで頑張る美容師の実感

つまり閑散期対策とは、忙しい月の行動を変えることでもあります。暇になってから頑張るより、ずっと少ない労力で効きます。次回予約の取り方はリピート率を上げる7つの方法でも詳しく扱っています。

値引きに逃げない集客のしかた

予約が埋まらないと、いちばん手軽に見えるのが割引です。けれど値引きは、いちど下げると戻しにくいという性質があります。閑散期のたびに割引を出していると、「その時期は安い」と学習されてしまい、翌年はさらに苦しくなります。

ポイント: 「安くする」のではなく「行く理由をつくる」と考えます。同じ予約を1件増やすのでも、値引きで釣るのか、時期に合った提案で来てもらうのかで、翌年の状況がまったく変わります。

時期に合わせた提案は、押し売りになりません。その時期に本当に必要なケアを伝えるだけです。

時期の特徴提案しやすいこと
汗をかく・紫外線が強い頭皮ケア、色落ち対策、扱いやすい長さへの調整
乾燥する保湿ケア、静電気・広がり対策、毛先のダメージ補修
予定が少ない時期イメージチェンジ、時間のかかる施術、髪質改善の集中ケア
イベント・行事が近い事前の仕上がり調整、当日を見据えたスケジュール提案

とくに「予定が少ない時期こそ、時間のかかる施術に向いている」という伝え方は有効です。忙しい時期には勧めにくい長時間メニューを、空いている時期の主力にできます。値引きせずに単価を保ったまま、枠を埋められます。

もうひとつ有効なのが、すでに来てくださった方に声をかけることです。新規を集めるより、一度いらした方に「そろそろですよ」とお伝えするほうが、はるかに手間も費用もかかりません。来店の周期を過ぎている方をリストで把握しておけば、閑散期にまとめて声をかけられます。

このとき大切なのは、売り込みの連絡にしないこと。「今月空きがあります」ではなく「前回から◯週間経ちましたが、そろそろ気になる頃ではないですか」と、相手の状態を起点に伝えます。こちらの都合ではなく、相手の必要から入るだけで、受け取られ方はまったく変わります。

あわせて、普段来られない層に目を向けるのも手です。平日の昼が空いているなら、その時間に動ける方に届く発信を。逆に夜が空くなら、仕事帰りに寄れることを伝える。誰に向けて言うかを変えるだけで、値引きなしに枠が埋まることがあります。

空いた時間を「消耗しない形」で使う

閑散期は、時間ができる時期でもあります。ここをどう使うかで、次の繁忙期の質が変わります。ただし「不安を埋めるための作業」に時間を使わないのがコツです。

とくに写真とSNSの素材づくりは投資効率が高い使い道です。繁忙期は撮影も投稿も後回しになりがちですが、閑散期にストックを作っておけば、忙しい時期も発信を止めずに済みます。発信が止まらなければ、次の閑散期はさらに浅くなります。

逆に、おすすめしないのが「SNSを見て落ち込む」「同業者と比べる」時間です。他店の繁忙は自分の閑散と無関係ですし、比べても予約は増えません。

ポイント: 閑散期にやることを、あらかじめリストにしておくと迷いません。暇になってから考えると、不安が先に立って手が止まります。「暇になったらこれをやる」を決めておくだけで、時間が投資に変わります。

メニューや価格の見直しは、まさにこの時期に向いています。落ち着いて数字を見られるタイミングは年に何度もありません。考え方はメニュー・料金の決め方にまとめています。

お金は「月」ではなく「年」でならす

最後に、いちばん現実的な話を。閑散期がつらいのは、収入が月ごとに上下するのに、支払いは毎月一定だからです。家賃も面貸し料も生活費も、暇な月だからといって安くはなりません。

だからこそ、1年を通してならして考える必要があります。忙しい月の収入を「今月はよかった」で使い切ってしまうと、暇な月に足りなくなります。

1
毎月の固定費を出す生活費+面貸し料や家賃+通信費など。「最低いくら必要か」を数字にします。
2
繁忙期は取り分けておく忙しい月の余剰は、暇な月のために先に分けておきます。
3
税金・社会保険の積立も忘れずにこれを収入と混ぜると、あとで必ず苦しくなります。
年で見る月単位の増減で一喜一憂しない
先に分ける繁忙期の余剰は使い切らない

とくに独立したての方が驚くのが、税金や国民健康保険の請求が、忙しかった年の翌年に来ることです。売上が落ち着いた時期に、前年分の請求が届く。ここで慌てないためにも、積立は最優先で確保しておきましょう。詳しくはフリーランス美容師の確定申告ガイドもご覧ください。

閑散期は、来ると分かっていれば怖くありません。数字で特定して、繁忙期に仕込んで、値引きに逃げず、時間を投資に変えて、お金は年でならす。この5つで、毎年おとずれる谷は確実に浅くなります。

この記事のまとめ
  • 予約が減るのは腕の問題ではなく季節要因のことが多い。毎年ほぼ同じ時期に来る
  • 感覚ではなく月別の売上と客数で特定する。減ったのが人か単価かを必ず分ける
  • いちばん効くのは繁忙期の仕込み。次回予約を、空く時期に寄せて先に押さえる
  • 値引きではなく「行く理由」をつくる。時間のかかる施術は空いている時期の主力になる
  • 空いた時間は素材づくり・カルテ整理・メニュー見直し・経費整理へ投資する
  • お金は月ではなく年でならす。繁忙期の余剰と、税金・社会保険の積立を先に分ける
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よくある質問

Q. 美容室の閑散期はいつですか?

地域やお客様の層によって変わるため、一概には言えません。大型連休や年末年始など、世の中の予定の直後は反動で空きやすい傾向がありますが、学生が多いサロンと会社員が多いサロンでも時期はずれます。他店の話や一般論をそのまま当てはめず、まずはご自身の月別の数字で確認するのが確実です。

Q. 閑散期に割引をするのはダメですか?

絶対にダメというわけではありませんが、毎年繰り返すと「その時期は安い」と学習され、正規料金で来ていただきにくくなります。値引きより「その時期に合った提案」で理由をつくるほうが、翌年以降が楽になります。

Q. 暇な日は休みにしてもいいですか?

体を休めることは大切ですが、収入も同時に減ります。まとめて休みを取り、残りの日に予約を寄せるほうが効率的です。空いている曜日・時間帯を数字で把握してから決めましょう。

Q. 独立1年目で、前年のデータがありません

1年目は記録を残すことが最優先です。毎日の客数と売上を入力しておけば、翌年には「去年のこの時期はこうだった」という判断材料になります。今日からの記録が、来年の武器になります。

Q. 閑散期の資金繰りが不安です

毎月の固定費を数字にし、繁忙期の余剰を先に取り分けておくのが基本です。税金・国民健康保険の積立は収入と混ぜないでください。売上管理のやり方で損益分岐点の考え方も解説しています。

Q. 空いた時間、何をすればいいか分かりません

事前にリスト化しておくのがおすすめです。写真とSNS素材のストック、カルテの整理、メニューと価格の見直し、経費の整理。とくにメニュー設計は落ち着いて考えられるこの時期が向いています。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・仕様の詳細は各提供元や専門家の最新情報をご確認ください。