会計ソフトを入れても確定申告は楽にならない
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会計ソフトを入れても確定申告は楽にならない

「確定申告 アプリ」で調べると、会計ソフトの比較記事がたくさん出てきます。銀行と連携できる、レシートを撮るだけ、スマホで完結——どれも本当です。ただ、実際に入れてみた美容師さんからは、こんな声もよく聞きます。

「入れたのに、結局2月に泣いている」

これは会計ソフトが悪いわけでも、あなたの使い方が下手なわけでもありません。美容師の確定申告がしんどい原因の半分は、会計ソフトが担当していない場所にある——ただそれだけの話です。この記事では、会計ソフトが得意なことと苦手なことを正直に分けたうえで、「何を入れれば2月が楽になるのか」を整理します。ソフトを増やす前に読んでいただけると、無駄な契約をひとつ減らせるはずです。

個人事業主の美容師がひとりで抱える仕事

確定申告の道具選びって、いちばん気力のないときにやることになりますよね。年末調整も源泉徴収票もない働き方だと、誰も準備してくれない。日中は指名のお客様に集中して、閉店後にSNSの投稿を考えて、そのうえで「会計ソフト 比較」を開く。正直、読む前から疲れています。しかも比較記事に出てくるのは「経理担当者向け」の言葉ばかりで、仕訳とか勘定科目とか、聞いた瞬間に眠くなる。その感覚、まったく正しいと思います。だからこの記事では、簿記の説明は最小限にして、「あなたの2月を短くするのは何か」だけに絞りました。

会計ソフトが得意なこと・苦手なこと

まず前提を揃えます。会計ソフト(freee・弥生・マネーフォワードなど)は、確定申告に必要な作業のうち「後半」に強い道具です。

確定申告の流れ誰が担当するか
① 毎日の売上を記録するあなた(会計ソフトは基本ノータッチ)
② 経費のレシートを残すあなた + ソフトの撮影機能
③ 通帳・カードの明細を取り込む会計ソフトが得意
④ 勘定科目に振り分ける会計ソフトが得意
⑤ 決算書・申告書をつくる会計ソフトが得意
⑥ e-Taxで提出する会計ソフトが得意

表を見て気づいたと思います。会計ソフトは③〜⑥を強力に助けてくれますが、①と②はほとんど助けてくれません。そして美容師の確定申告がしんどくなる原因は、たいてい①と②にあります。

2月に泣くのは、たいていこの2つ
  • 現金でいただいた売上の記録が、どこにも残っていない
  • 店販の仕入れと、自分用に使ったぶんの区別がつかない
  • レシートの山から「これは経費か?」を1枚ずつ判断している
  • 面貸し先からの支払明細と、自分の記録が合わない

会計ソフトの自動連携は「銀行口座とクレジットカードを通ったお金」に強い仕組みです。現金の売上や、私用カードで買った材料は、そもそも自動では入ってきません。ここが美容師の実務と噛み合わない一番の理由です。

ポイント: 会計ソフトは「集めた数字を申告書にする機械」。数字を集める工程は別に用意する必要があると考えると、道具選びを間違えません。

あなたに必要なのはどっち? 2つの分かれ道

ここまでを踏まえると、必要な道具は働き方によって変わります。判断の分かれ目はシンプルです。

1
売上の入り方を確認する面貸し先や委託先から「月1回まとめて振込」なら、売上の記録はシンプル。自分で現金・キャッシュレスを受け取っているなら、日々の記録が必要。
2
経費の払い方を確認する事業用の口座とカードにまとまっているなら自動連携が効く。私用と混ざっているなら、自動化してもあとで仕分ける手間が残る。
3
どちらが重いかで、入れる順番を決める①が重いなら記録の仕組みを先に、②が重いなら会計ソフトを先に。
あなたの状況先に入れるべきもの理由
業務委託で、報酬が月1回振り込まれる会計ソフト(または申告アプリ)売上は明細で確定するので、経費の仕分けが主戦場
面貸しで、お客様から直接いただく日々の売上を記録する仕組みここが抜けると、そもそも申告する数字が作れない
店販がある/材料を自分で仕入れる経費を記録する仕組み仕入と自家使用の区別は、後から思い出せない
売上が年間で数百万円を超えてきた会計ソフト+税理士への相談節税と手間のバランスが変わる規模

よくある失敗が、面貸しで働いているのに会計ソフトだけ契約するパターンです。連携するべき事業用口座を通るお金が少ないので、自動化のメリットがほとんど出ません。結局2月に、手帳とレシートから1年分を思い出す作業が発生します。

初年度に有名な会計ソフトを契約しました。でも私は現金でいただくことが多くて、口座に入るのは自分で入金したぶんだけ。連携しても中身が分からないので、結局2月にカレンダーとにらめっこして売上を思い出しました。先に必要だったのは、毎日の売上を記録する場所だったんだと後から気づきました。
— ひとりで頑張る美容師の実感
あなたに必要なのはどっち? 2つの分かれ道

費用の目安と、増やさないための考え方

道具は増やすほど月額が積み上がります。ひとりで働く以上、これは全部あなたの手取りから引かれます。

1,000〜3,000円個人事業主向け会計ソフトの月額の目安(年払いで割安になることが多い)
年2〜4万円会計ソフトの年間負担の目安。経費にはなるが手元からは出ていく
65万円青色申告特別控除の最大額。要件を満たせば会計ソフト代を大きく上回る

費用の話をすると、多くの人が「安いほうがいい」と考えます。でも判断基準はそこではありません。青色申告の65万円控除を確実に取れるかどうかのほうが、金額のインパクトははるかに大きい。控除が取れれば、所得税・住民税・国民健康保険料まで下がります。会計ソフト代の数万円は、そこから見れば小さな投資です。

ポイント: 道具の比較で消耗するより、「65万円控除の要件を満たせる状態を1年間キープできるか」で選ぶこと。要件と手順は青色申告のやり方にまとめています。

そのうえで、道具を増やさないコツは「記録する場所を1つに決める」ことです。売上はここ、経費はここ、と場所が決まっていれば、年末にどこから集めるか迷いません。逆にいうと、アプリを2つ3つ入れて用途が重なっている状態がいちばん危険です。どこに入れたか分からなくなり、結局どちらも信用できなくなります。

あわせて、経費にできるものを最初に把握しておくと記録の精度が上がります。「これは経費になるのかな」と迷った時点で記録が止まってしまうからです。判断の基準は業務委託・面貸し美容師の経費一覧で具体的に整理しています。

2月を短くする、いちばん確実な順番

結論としておすすめしたいのは、次の順番です。道具を増やす前に、記録が貯まる状態を先に作ります。

1
売上を毎日記録する場所を1つ決める日付・金額・指名かフリーか。この3項目でいい。ここが土台。
2
経費は「払った瞬間」に記録するレシートを撮る、または金額と用途を入れる。後回しにすると必ず消える。
3
事業用の口座とカードを1つずつ用意する私用と分けるだけで、自動連携の効果が跳ね上がる。
4
そのうえで会計ソフトを検討する①〜③が回っていれば、申告書づくりは短時間で終わる。

①〜③は今日から始められて、しかも無料でもできます。逆に、①〜③をやらずに④から入ると、ソフト代を払ったのに2月の作業量が変わらない、という結果になりがちです。

③の「口座を分ける」が、いちばん効果が大きい

地味に見えて、実は費用ゼロで一番効くのが③です。私用と事業用が混ざった口座を連携すると、コンビニの昼食からシザーの購入まで全部が同じ明細に並びます。会計ソフトが自動で取り込んでくれても、「これは経費/これは私用」の判断だけは自分でやることになるので、件数が多いほど作業が増えます。

私用と混ざっている事業用に分けている
自動取込のあと1件ずつ経費か私用か判断するほぼ全件が経費。確認するだけ
月にかかる時間30分〜1時間5分程度
もれ・二重計上起きやすい起きにくい
税務署に聞かれたとき説明に手間がかかる口座の明細がそのまま説明になる

やることは、ネット銀行で口座を1つ開き、そこにひもづくカードを1枚作って、材料と備品はそのカードで買うだけです。屋号付きの口座でなくても、私用と分かれていれば実務上の効果は出ます。ソフトを比較する時間より、この30分のほうがリターンが大きいと断言できます。

ポイント: 「確定申告の準備」は2月にやる作業ではなく、1年かけて自動的に貯まっている状態を作ること。道具はそのための手段でしかありません。

もうひとつ。近年は国税庁側のシステムも整備が進み、記録の見え方が変わってきています。「きちんと残しておく」ことの重要性は上がる方向にあるので、早めに習慣にしておくほど安心です。詳しくは国税システム刷新と美容師の記録の残し方をご覧ください。なお、税務の具体的な判断は事情によって変わります。金額が大きくなってきたら、早めに税理士に相談することをおすすめします。

「サロン系アプリ」と「会計ソフト」は敵ではない

最後に、よく誤解されるところを整理します。サロン向けのアプリと会計ソフトは、担当する範囲が違うので、どちらかを選ぶという話ではありません

サロン系アプリが担当会計ソフトが担当
日々の売上の記録◎ 施術の流れの中で入力できる△ 手入力になる
お客様のカルテ
経費のメモ・レシート◎ 自動読み取り
口座・カードの自動取込
勘定科目の振り分け△ 目安まで
決算書・申告書の作成
e-Taxでの提出

実務でよくある組み合わせは、日々の売上と経費はサロン系アプリで貯めて、年末にCSVで書き出し、会計ソフトか税理士に渡すという形です。これなら記録は現場の流れの中で終わり、申告書づくりは得意な道具に任せられます。

逆に、売上規模がまだ小さく、経費の点数も少ないうちは会計ソフトを契約せず、記録アプリ+確定申告書等作成コーナー(国税庁のウェブサービス)で済ませるという選択も十分に現実的です。無理に増やす必要はありません。あなたの2月を短くするのは、ソフトの数ではなく、1年ぶんの記録が揃っていることです。

この記事のまとめ
  • 会計ソフトは「集めた数字を申告書にする機械」。日々の売上を記録する工程はほとんど助けてくれない。
  • 面貸しで現金・キャッシュレスを直接受け取るなら、会計ソフトより先に「毎日の売上を記録する場所」が要る。
  • 事業用の口座とカードを分けるだけで、自動連携の効果は大きく変わる。
  • 費用は月1,000〜3,000円が目安。ただし判断基準は安さではなく、青色申告65万円控除を1年キープできるか。
  • サロン系アプリと会計ソフトは担当範囲が違う。記録は現場で、申告書づくりは得意な道具に、が現実的。
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よくある質問

Q. 会計ソフトは必ず必要ですか?

必須ではありません。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、ソフトなしでも申告書は作れます。ただし青色申告の65万円控除には複式簿記による記帳とe-Tax提出などの要件があり、これを手作業で満たすのは負担が大きいのが実情です。取引の数が少ないうちはソフトなしでも回りますが、経費の点数が増えてきたら検討する価値があります。判断に迷う場合は税理士にご相談ください。

Q. freeeと弥生とマネーフォワード、どれがいいですか?

どれも個人事業主の確定申告に対応しており、この記事で挙げた「後半の工程」はいずれも十分こなせます。差が出るのは操作の感覚と、あなたが使っている銀行・カードとの相性です。ほとんどのソフトに無料お試し期間があるので、比較記事を読み込むより、実際に自分の口座を1つ連携してみるほうが早く判断できます。なお料金や機能は変わることがあるため、最新の情報は各社の公式サイトでご確認ください。

Q. 現金でいただいた売上は、どう記録すればいいですか?

「その日のうちに、日付と金額を残す」これに尽きます。方法はアプリでもノートでも構いませんが、後日まとめて思い出す方式だけは避けてください。ほぼ必ず抜けます。おすすめは、お会計のタイミングで金額と指名かフリーかだけ入力してしまうやり方です。1件10秒程度で済み、月末の集計も確定申告も同じ記録から作れます。

Q. レシートは撮影したら捨てていいですか?

扱いは書類の種類と保存方法の要件によって変わります。紙で受け取った領収書は紙のまま保管するのが原則で、撮影したデータだけで紙を廃棄するには一定の要件を満たす必要があります。一方、メールやウェブでやりとりした電子データは電子のまま保存することが求められます。詳しくは美容師のための電子帳簿保存法で整理しています。判断に迷う場合は税務署や税理士に確認してください。

Q. 税理士に頼むといくらくらいかかりますか?

個人事業主の確定申告のみを依頼する場合、一般には年間で数万円台から、記帳代行まで含めると十万円台になることもあります。金額だけ見ると高く感じますが、節税の判断や、税務署からの問い合わせに備えられる安心感を含めて考える性質の費用です。売上が伸びてきた、店販の在庫が増えた、法人化を考えている——このあたりに当てはまったら、一度相談してみる価値があります。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・仕様の詳細は各提供元や専門家の最新情報をご確認ください。