同じ売上でも手取りは10万円違う
お役立ちガイド / 働き方
働き方

同じ売上でも手取りは10万円違う

「業務委託とシェアサロン、どっちが得なんだろう」。求人票や募集ページを何度も見比べたことがある方は多いと思います。片方は歩合50%、もう片方は席料15万円で売上は全部あなたのもの。並べて書かれていても、この2つは単位が違うので、そのままでは比べられません

この記事では、歩合率や席料といった「表に出ている条件」だけでなく、材料費・集客費・空席のリスクまで含めて、売上40万円・60万円・80万円のケースで実際に手取りを計算します。そのうえで、あなたの数字を当てはめれば損得が入れ替わる「分かれ目」がすぐ出せる、シンプルな式もお伝えします。読み終わるころには、感覚ではなく金額で判断できるようになっているはずです。

個人事業主の美容師がひとりで抱える仕事

働き方を選び直すタイミングって、たいてい余裕がない時期に来ますよね。日中は指名のお客様に集中して、閉店後にSNSの投稿を考えて、スタイル写真を選んで、口コミに返信して、明日の予約を確認して。そのうえで「契約条件を計算して比較する」なんて、正直そこまで手が回らない——その感覚、とてもよく分かります。だから多くの方が、歩合率の数字の大きさや、知り合いの「あそこはいいらしい」という話で決めてしまいます。でも、働き方の選択は毎月の手取りに何万円も効き続ける、いちばん割のいい"1回の計算"です。この記事の計算は、電卓ひとつで5分あれば終わります。忙しいあなたの代わりに、面倒な部分は全部こちらで整理しました。

「歩合50%」と「席料15万円」は、そのままでは比べられない

まず前提の整理から。業務委託とシェアサロン(面貸し)は、お金の流れの向きがそもそも違います。

業務委託サロンシェアサロン・面貸し
お金の受け取り方サロンが売上を預かり、歩合分が報酬として支払われる売上は自分に入り、そこから席料を支払う
材料費(薬剤・カラー剤)サロン負担のことが多い原則として自己負担
集客サロンが中心。フリー客が回ってくる自分で集める。回ってこない前提
掲載費・広告費サロン持ち、または一部天引き自分で契約・自分で支払い
タオル・シャンプー等の備品サロン持ちが多い席料に含む場合と実費の場合がある
お客様が来なかった月報酬は減るが、支払いは発生しない席料の支払いは発生する

いちばん大事なのは最後の行です。業務委託は「売れなければゼロ」、シェアサロンは「売れなくてもマイナス」。この非対称性が、後で出てくる分かれ目の正体になります。

ポイント: 比べるべきは歩合率でも席料でもなく、「最終的に自分の口座に残る額」です。同じ土俵に乗せるには、シェアサロン側の材料費と集客費を必ず足し算に入れること。ここを忘れると、シェアサロンが実際より2〜3万円お得に見えてしまいます。

なお、シェアサロンの料金形態は大きく3タイプあります。月額定額型(月に決まった席料を払う)、歩率型(売上の30〜50%程度をサロンに支払う)、時間貸し型(1時間あたり1,500〜2,000円程度が目安)です。売上が伸びるほど有利になるのは定額型、売上が読めないうちに安心なのは歩率型・時間貸し型、という関係になります。募集ページを見るときは、まず自分が見ているのがどのタイプなのかを確かめてください。

実際に計算してみる|売上40万・60万・80万のケース

では具体的に計算します。条件は、よくある相場感を目安として置きました(地域・立地で幅があるので、あとでご自身の数字に置き換えてください)。

45%業務委託の歩合率の目安(材料費・集客はサロン負担)
18万円シェアサロンの月額席料の目安(都市部・好立地)
8%材料費の売上比の目安(自己負担の場合)
2万円掲載費・広告費の月額目安(自己負担の場合)

この条件で、税金・社会保険を引く前の「手元に残る額」を並べます。

月の売上業務委託(歩合45%)シェアサロン(席料18万・材料8%・集客2万)
40万円18.0万円16.8万円業務委託が約1.2万円有利
50万円22.5万円26.0万円シェアが約3.5万円有利
60万円27.0万円35.2万円シェアが約8.2万円有利
70万円31.5万円44.4万円シェアが約12.9万円有利
80万円36.0万円53.6万円シェアが約17.6万円有利

数字にすると、はっきり傾向が出ます。売上40万円台の前半あたりで損得が入れ替わり、そこから上はシェアサロンの差が一気に開いていく。これは当然で、業務委託は売上が伸びても55%はサロン側に残るのに対し、定額型のシェアサロンは席料が固定なので、伸びた分がほぼそのまま自分に乗るからです。

逆にいえば、売上が40万円を下回る月が続くなら、業務委託のほうが手元に残るということでもあります。しかも業務委託には「売れなかった月の支払いがない」という安心がついてくる。ここを冷静に見ておかないと、「独立したのに前より手取りが減った」という一番つらいパターンになりかねません。

歩合55%の業務委託から、席料18万円のシェアサロンに移りました。移った直後の3か月は売上が45万円くらいまで落ちて、正直「前のほうが良かったかも」と思いました。指名のお客様が戻ってきて売上が70万円台に乗ったのは半年後。数字で言えば今のほうがずっと良いのですが、その半年をしのげる貯金があったかどうかが分かれ目だったと思います。
— ひとりで頑張る美容師の実感
実際に計算してみる|売上40万・60万・80万のケース

自分の分かれ目を出す、電卓5分の計算式

相場の数字ではなく、あなたが今検討している2つの条件で分かれ目を出しましょう。手順は3つだけです。

1
シェアサロン側の「毎月かならず出ていくお金」を足す席料+掲載費・広告費+通信費や保険など固定でかかるもの。ここでは仮に「固定費」と呼びます。例:18万円+2万円=20万円。
2
売上に応じて増える負担の差を出す業務委託でサロンに入る割合(例:55%)から、シェアサロンで出ていく割合(材料費など。例:8%)を引きます。55% − 8% = 47%。
3
固定費を、その差で割る20万円 ÷ 47% = 約42.5万円。これがあなたの分かれ目の売上です。
分かれ目の売上 = シェアサロンの月額固定費 ÷(業務委託でサロンに入る割合 − シェアサロンでの変動負担の割合)
この売上を安定して超えられそうならシェアサロン、超えられない月が多そうなら業務委託、が金額上の答えになります。

実際に手を動かすと、条件の違いがどれだけ効くかが見えてきます。たとえば席料が18万円ではなく12万円のシェアサロンなら、固定費は14万円になり、分かれ目は「14万円 ÷ 47% = 約29.8万円」まで下がります。席料が6万円違うだけで、分かれ目は13万円近く動く。募集ページの席料を見比べる価値は、ここにあります。

反対に、業務委託側の歩合が55%と好条件なら、サロンに入る割合は45%。ここから材料費8%を引くと37%になり、分かれ目は「20万円 ÷ 37% = 約54万円」まで上がります。つまり歩合の良い業務委託を持っている人ほど、シェアサロンに移るハードルは高くなるということです。

歩率型のシェアサロンを検討している場合は、少し話が簡単になります。たとえば「売上の35%をサロンへ」なら、材料費8%を足して自己負担は43%。業務委託でサロンに入る割合が55%なら、売上がいくらであっても歩率型のほうが手元に残る計算です。ただし歩率型は席料型より条件面での上限(受けられる予約数や設備の使用時間)がある場合も多いので、金額だけで決めず、実際の稼働イメージと合わせて確認してください。より詳しい料金の見方は面貸しサロンの選び方と料金相場で解説しています。

数字に出てこない差|ここを見落とすと計算が狂う

ここまでの計算は、あくまで「売上が同じだったら」という前提です。実際には、働き方を変えると売上そのものが変わります。むしろこちらのほうが金額へのインパクトは大きいくらいです。

移ってから気づきがちな、こんなこと
  • フリー客が回ってこなくなり、思っていたより予約が埋まらない
  • 掲載サイトの費用を自分で払う立場になって、費用対効果が急に気になり始めた
  • 薬剤の在庫を自分で持つことになり、月によって材料費が読めない
  • 体調を崩して1週間休んだ月も、席料はそのまま出ていった
  • お客様の連絡先や履歴を前の店から持ち出せず、一から作り直しになった

とくに重いのが集客です。業務委託ではサロンが集めてくれていた新規が、シェアサロンではゼロになります。自分の指名客が何人いて、そのうち何人が付いてきてくれるのか。ここを見誤ると、先ほどの表の「売上60万円」の行にそもそも乗れません。面貸し・業務委託美容師が指名客を増やす方法で触れているとおり、集客には順番があり、移る前から準備しておけることがあります。

もうひとつが空席リスクです。業務委託は売上が下がれば報酬も下がりますが、支払いが増えることはありません。シェアサロンは、休んでも、体調を崩しても、席料の請求は同じ日に来ます。この非対称性は精神的な負担にもなるので、最低3か月分の固定費に相当する現金を持ってから動くのが現実的な目安です。

さらに、どちらの働き方でもあなたは個人事業主です。国民健康保険・国民年金は自分で払い、確定申告も自分で行います。業務委託だから確定申告が要らない、ということはありません。シェアサロンの場合は席料や材料費が経費になる一方で、経費の記録を残す手間も増えます。税金の扱いは事情によって変わるので、判断に迷う場合は税理士など専門家に確認してください。

タイプ別|いま、どちらを選ぶのが現実的か

金額だけでは決められない部分を含めて、状況別に整理します。

いまの状況向いている選択理由
指名客が20人未満、売上が月40万円前後業務委託分かれ目に届かず、席料が重荷になりやすい。まず指名を増やす時期
指名客が安定し、売上が月50万円を超える月が多いシェアサロン売上が伸びた分がそのまま手取りに乗る。差が毎月積み上がる
売上の波が大きく、月ごとに20万円以上ぶれる業務委託、または歩率型のシェア固定費が読めない波と噛み合わない。悪い月にダメージが集中する
数年以内に自分の店を持ちたいシェアサロン集客・仕入れ・数字管理を、家賃リスクの小さい環境で先に経験できる
技術に集中したい、経営の手間は避けたい業務委託集客・備品・広告の手配をサロン側に任せられる

迷ったときに効く順番があります。「まず業務委託で指名を増やし、分かれ目の売上を安定して超えてからシェアサロンに移る」。これがいちばん失敗が少ない進み方です。逆に、指名がまだ育っていない段階で席料の負担を背負うと、集客に使えるはずの気力とお金が、支払いのために削られてしまいます。

ポイント: 移るかどうかを決める前に、直近6か月の「自分の指名売上だけ」を出してみてください。フリー客を除いた数字が、シェアサロンに移った直後のあなたの売上に近くなります。この数字が分かれ目を超えているかどうかが、いちばん正直な判断材料です。

より広い視点での違い(契約時の注意点や自由度の比較)は、業務委託と面貸し、結局どっちが得なのかにまとめています。歩合の中身をもっと詳しく確認したい方は業務委託美容師の手取りの仕組みと相場もあわせてどうぞ。

どちらを選んでも、数字を持っている人が強い

ここまで計算してきて、気づいたことがあるかもしれません。分かれ目を出すのに必要な数字は、全部「自分の売上と経費」だということです。

直近6か月の指名売上、客単価、指名率、材料費が売上の何%か。この4つを言える人は、条件を見た瞬間に「自分にとって得かどうか」が判断できます。逆にこれが分からないと、どんなに良い記事を読んでも、最後は「なんとなく」で決めるしかありません。

1
毎日の売上を記録する日別に入力するだけで、月の着地と客単価・指名率が見えるようになる。
2
指名とフリーを分けて数える移籍後の売上予測に直結する、いちばん大事な数字。
3
材料費・掲載費を経費として記録する確定申告にそのまま使えて、分かれ目の計算にも使える。

この3つが揃っていれば、次に条件を見たときに迷いません。移る・移らないだけでなく、値上げをするか、メニューを変えるか、掲載をやめるか——働き方のあらゆる判断が、感覚ではなく数字でできるようになります。売上管理のやり方もあわせて参考にしてください。

この記事のまとめ
  • 業務委託は「売れなければゼロ」、シェアサロンは「売れなくてもマイナス」。この非対称性が損得の分かれ目を生む。
  • 歩合率と席料は単位が違うので直接比べられない。材料費・掲載費まで含めて「口座に残る額」で比較する。
  • 目安の条件(歩合45%/席料18万円/材料8%/集客2万円)では、分かれ目はおおよそ売上40万円台前半。それを超えると差は一気に開く。
  • 分かれ目の売上 = シェアサロンの月額固定費 ÷(業務委託でサロンに入る割合 − 変動負担の割合)。電卓5分で自分の数字が出せる。
  • 判断材料でいちばん正直なのは「直近6か月の指名売上だけ」。フリー客を除いた数字が、移った直後の自分の売上に近い。
Salon Oneで仕事を仕組み化して軽くする

分かれ目の計算に必要な数字が、入力するだけで揃います

Salon Oneは、日々の売上を入力するだけで客単価・指名率・月の着地予測を自動で計算します。指名とフリーを分けて記録できるので、「移った直後の自分の売上」も見当がつけられます。材料費や掲載費は経費として記録でき、そのまま確定申告にも使えます。無料プランから使えるので、まずは直近の数字を入れて、自分の分かれ目を出してみてください。

無料ではじめる

よくある質問

Q. シェアサロンの席料の相場はどのくらいですか?

月額定額型は、都市部の好立地で月15〜20万円程度、地方や駅から離れた立地では月8〜12万円程度が目安といわれます。歩率型なら売上の30〜50%程度、時間貸し型は1時間1,500〜2,000円程度が目安です。ただし、タオルやシャンプー台の使用料、薬剤の持ち込み可否、受付スタッフの有無で実質的な負担は変わります。金額だけでなく「席料に何が含まれるか」を必ず確認してください。

Q. 業務委託でも確定申告は必要ですか?

必要です。業務委託は雇用ではなく個人事業主としての働き方なので、年末調整はなく、自分で確定申告を行います。国民健康保険・国民年金も自分で納めます。「サロンに所属しているから会社がやってくれる」と誤解したまま初年度を過ごしてしまう方が少なくないので、早めに準備しておくと安心です。詳しくはフリーランス美容師の確定申告 完全ガイドをご覧ください。

Q. シェアサロンに移るとき、お客様の連絡先は持っていけますか?

契約内容によります。顧客情報はサロン側の資産と定められている場合が多く、名簿の持ち出しを禁じる条項が入っていることも珍しくありません。トラブルになりやすい部分なので、契約書の該当箇所を必ず確認してください。自分のSNSやLINEでお客様と個別につながっておくことは、多くの場合それとは別の話として進められます。移籍の可能性が少しでもあるなら、日頃から自分の発信を持っておくことが結果的に一番の備えになります。

Q. 売上が読めないうちは、どちらを選ぶべきですか?

波が大きい時期は、固定費の少ないほうが安全です。業務委託か、シェアサロンなら歩率型・時間貸し型を選ぶと、悪い月のダメージが小さくなります。定額型のシェアサロンは「売上が安定して分かれ目を超えている」ことが前提の選択だと考えてください。移る場合も、最低3か月分の固定費に相当する現金を用意してから動くのが現実的です。

Q. 差が10万円といっても、税金を引いたらもっと縮まりませんか?

そのとおりで、記事の計算は税金・社会保険を引く前の金額です。手元に残る額が増えれば所得も増えるため、所得税・住民税・国民健康保険料も増えます。ただし、シェアサロン側は席料・材料費・掲載費が経費として計上できるため、売上に対する課税所得の割合は下がります。実際の税負担は所得や控除の状況で大きく変わるので、具体的な金額は税理士など専門家に確認することをおすすめします。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・仕様の詳細は各提供元や専門家の最新情報をご確認ください。