その手、使えなくなったらどうしますか?
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その手、使えなくなったらどうしますか?

美容師の仕事は、手が使えて初めて成り立つ仕事です。もし腱鞘炎やけが、病気で長期間ハサミを握れなくなったら、収入はどうなるでしょうか。会社員のような傷病手当金がない業務委託・フリーランスの美容師にとって、これは決して他人事ではない問題です。

この記事では、働けなくなったときの収入を補う「就業不能保険・所得補償保険」の仕組みと、加入を検討する際の考え方を整理します。

個人事業主の美容師がひとりで抱える仕事

「まさか自分が」と思うかもしれませんが、長時間の立ち仕事や、同じ動作の繰り返しによる腱鞘炎、突然の病気やけがは、誰にでも起こり得ることです。会社員であれば健康保険から傷病手当金が支給されますが、国民健康保険にはこの制度がありません。

つまり、フリーランス・業務委託・面貸しで働く美容師は、働けなくなった瞬間から収入がゼロになるリスクを、会社員より大きく抱えているということです。「元気なうちは考えたくない話」だからこそ、元気なうちに一度向き合っておく価値があります。家族に説明を求められたときにすぐ答えられるくらい、自分の備えを把握しておくことも、独立して働くうえでの責任の一つと言えるかもしれません。

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会社員と何が違うのか、まず知っておく

会社員が病気やけがで働けなくなると、健康保険から傷病手当金(給与のおよそ3分の2程度、最長1年6か月)が支給されます。一方、国民健康保険にはこの制度が基本的にありません。

傷病手当金なし国民健康保険には、会社員のような傷病手当金の制度が基本的にない
収入は即ゼロに働けなくなった瞬間から、施術ベースの収入は止まってしまう

労災保険の特別加入をしていれば業務中のけがなどは一部カバーされますが、私的な病気やけがは対象外です。この「会社員との違い」を知らないまま独立している方は、意外と多いのが実情です。独立したばかりの頃は目の前の集客や技術の向上に意識が向きがちで、こうした制度の違いにまで気が回らないのも無理のないことです。

就業不能保険・所得補償保険とは何か

就業不能保険・所得補償保険は、病気やけがで働けなくなった期間の収入を、契約であらかじめ決めた金額まで補償する民間の保険です。生命保険会社・損害保険会社それぞれから、さまざまな商品が販売されています。

区分特徴
就業不能保険(生命保険系)長期の就業不能を想定。精神疾患を含むかどうかは商品による
所得補償保険(損害保険系)比較的短期〜中期の就業不能を想定した商品が多い

どちらも「働けない間の収入の穴」を埋めるための保険ですが、補償される期間・条件・保険料は商品ごとに大きく異なります。「入っておけば安心」ではなく、内容をきちんと比較して選ぶことが大切です。名前が似ている商品でも中身がまったく違うことがあるため、パンフレットの表面だけで判断せず、約款まで確認する習慣をつけておきましょう。

就業不能保険・所得補償保険とは何か

加入を検討するときの確認ポイント

実際に検討する際は、次の点を順番に確認していくと選びやすくなります。

1
免責期間(待機期間)を確認する働けなくなってから、実際に給付が始まるまでの期間です。短いほど手厚いですが、保険料も変わります。
2
給付期間を確認する1年・2年・60歳までなど、どのくらいの期間補償されるかを確認します。
3
対象になる病気・けがの範囲を確認する精神疾患や特定の病気が対象外になっている商品もあります。
4
毎月の保険料と補償額のバランスを見る保険料が家計・事業資金を圧迫しない範囲で検討します。

特に「手を使う仕事」であることを保険会社にどう伝えるかによって、条件が変わることもあります。美容師であることを正しく伝えたうえで、複数の商品を比較検討しましょう。

加入前に見落としやすい注意点

「入っておけば安心」と思って契約する前に、見落としやすいポイントも押さえておきましょう。

やりがちな失敗
  • 免責期間が長く、実際に困る初期の数週間〜数か月がカバーされていなかった
  • 精神的な不調(うつ病など)が補償対象外だと、契約後に気づいた
  • 複数の保険に加入しすぎて、保険料の負担が事業の資金繰りを圧迫していた

就業不能保険は、「入る・入らない」の二択ではなく、「どの範囲まで自分で備え、どこから保険に頼るか」を考えるものです。生活防衛費(当面の生活費の貯蓄)とあわせて、無理のない範囲で組み合わせることが大切です。

保険だけに頼らない、日頃からの備え方

保険はあくまで「もしものときの備え」の一つです。そもそも手を痛めにくい働き方を日頃から意識しておくことも、同じくらい大切な備えになります。

ポイント: 施術の合間のストレッチや、無理のない姿勢での作業、定期的な体のメンテナンスは、就業不能そのものを防ぐための一番の対策です。保険と体のケア、両方をセットで考えましょう。

また、生活防衛費として数か月分の生活費を別に確保しておくことも、保険と並ぶ大切な備えです。保険金が支払われるまでの免責期間をしのぐ役割を果たしてくれます。目安としては、生活費の3〜6か月分を、事業用の資金とは別の口座に分けて確保しておくと、いざというときに慌てず対応できます。

まずは自分の状況を整理することから

就業不能保険を検討する前に、「今、働けなくなったら何か月生活費がもつか」「国民健康保険・国民年金以外に何か備えがあるか」を一度整理してみましょう。すでに小規模企業共済や貯蓄で一定の備えができている方もいれば、まったく何もない方もいます。

自分の現状を把握したうえで、足りない部分だけを保険で補うという考え方をすると、過不足のない選び方ができます。焦って加入する前に、まずは自分の状況を数字で確認することから始めてみてください。忙しさを理由に先延ばしにしがちなテーマだからこそ、確定申告が終わったタイミングなど、年に一度は振り返る機会を決めておくとよいでしょう。

この記事のまとめ
  • 国民健康保険には会社員のような傷病手当金の制度がなく、フリーランス美容師は働けなくなると収入が即ゼロになりやすい
  • 就業不能保険・所得補償保険は、働けない期間の収入を補う民間の保険で、商品により条件が大きく異なる
  • 免責期間・給付期間・対象となる病気やけがの範囲を必ず確認してから加入を検討する
  • 保険だけに頼らず、日頃の体のケアと生活防衛費の確保をセットで考えることが大切
  • 加入前に「今働けなくなったら何か月もつか」を一度整理し、足りない部分だけを保険で補う考え方が有効
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よくある質問

Q. 国民年金にも、障害を保障する制度はありますか?

国民年金には「障害基礎年金」という制度があり、一定の障害状態と認定されれば年金が支給されます。ただし就業不能保険とは対象範囲や認定基準が異なるため、別の備えとして考える必要があります。

Q. 腱鞘炎のような慢性的な不調も、保障対象になりますか?

商品によって異なります。慢性的な症状は「就業不能」の認定基準を満たすかどうかの判断が難しい場合もあるため、契約前に約款や保険会社への確認が必要です。

Q. 保険料はどれくらいが目安ですか?

年齢・性別・補償内容によって大きく異なります。複数の保険会社やファイナンシャルプランナーに見積もりを取り、家計・事業資金を圧迫しない範囲で比較検討することをおすすめします。同じ補償内容でも会社によって保険料に差が出ることがあるため、一社だけで決めないことが大切です。

Q. 労災保険の特別加入をしていれば就業不能保険は不要ですか?

労災保険の特別加入は業務中のけがなどが対象で、私的な病気やけがはカバーされません。両方の保障範囲の違いを理解したうえで、必要に応じて組み合わせることが大切です。

Q. 独立したばかりでも加入できますか?

多くの商品で独立直後でも加入できますが、収入実績が少ないと補償額の上限が制限される場合があります。事業が軌道に乗ってから見直すことも選択肢の一つです。まずは保険料の負担が軽い商品から始め、収入が安定してきたタイミングで補償内容を見直す方法もあります。

Q. 掛け持ちで複数のサロンから収入を得ている場合はどうなりますか?

収入の合算方法や補償額の上限の考え方は保険会社によって異なります。掛け持ちの働き方であることを正直に申告したうえで、複数の保険会社に見積もりを依頼して比較することをおすすめします。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・仕様の詳細は各提供元や専門家の最新情報をご確認ください。